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2024/07/26

【LIVE REPORT】FUJI ROCK FESTIVAL’24

苗場スキー場

2024年7月26日、FUJI ROCK FESTIVAL ’24の初日トッパーを飾った新東京。昨年のROOKIE A GO-GOステージ企画のファン投票で1位を獲得したことにより、今年はついに主要ステージの一つであるRED MARQUEEに立つことができました。支えてくださったみなさんへの感謝を込めて、セルフライブレポートをお送りします!

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Text by 新東京スタッフ
Photo by Taito Kudo

熱風を纏って

記念すべきステージは昨年のROOKIEと同様に、Key. 田中利幸のアンビエントなサウンドからスタートする。しかし今年は、5,000人を収容するRED MARQUEEの客席からステージへと吹く熱風が田中の髪を靡かせる。
パーカションライクなBa. 大蔵倫太郎のサウンドに、Dr. 保田優真の巨大なうねりのようなドラムが合流していく。

大蔵の「フジロックを始めましょう。お願いします。」から始まった、彼らのライブの冒頭ではお馴染みの前奏に「あの曲が来る」という高揚感が押し寄せる。そう、“NTM” (from 1st album 『NEO TOKYO METRO』)だ。サビのハイハットの軽快で酸味のある音が、Vo. 杉田春音のいつもより短く切っていくような歌い方と交差する。

そのままシームレスに繋がった“The Few” (from 1st EP 『新東京 #1』) では、前奏で大蔵の様子を伺いながら笑顔をこぼしていたのをはじめ、終始保田がリラックスした表情を見せていた。
続く“ユートピアン” (from 1st EP 『新東京 #1』) では、途中のカオスセクションはどの楽器ともいつもより激しく、そしてお互いの呼吸を確かめ合うように奏でられ、杉田の「雲一つない青空は」でセクションが明けるとまさしく雲のような幻影が数ミリ秒で消え去っていく感覚があった。

次の“Heavy Fog (Organic)” (from 5th EP 『新東京 #3 (Organic)』) の頃には、気づけばRED MARQUEEは後ろまで埋まり、今がフジロック初日の午前であることを忘れさせる。

そしてベースとドラムのDuo。BPMは150。保田のサイレンサーを着けた銃のような乾いたスネアやタム、バスドラと、大蔵の破裂音が弾け飛ぶスラップが、2人だけのA.T.フィールドを形成しているかのようでもあり、自然と歓声と手拍子が沸き起こる。もちろん“Escape” (from 1st album 『NEO TOKYO METRO』)へと続く。

「みなさん自分の乗り方で!最後まで!」とボルテージを上げて歌う杉田の鋭い視線は会場後方へ飛ばされる。随所に大蔵の遊び心が織り込まれながら、最後の間奏に突入。キーボードとベースがもつれ合いながらユニゾンの気味になる箇所のフィニッシュで思わず田中が立ち上がり、笑みが溢れる。

そこから継ぎ目なく“Cynical City” (from 1st EP『新東京 #1』) へ。
杉田の「フジロック!踊ろうぜーー!」に続いて、砂漠の熱風を思わせる、大きく歪んだサウンドで粘り気のあるグリッサンドをキメる田中。
2サビの後はドラムとベースが呼応するソロ。風神雷神の一柱、保田のドラムソロはいつになくバスドラムとタムの音が太く野生的で、雷鳴のようなシンバル類とのコントラストが激しい。もう一柱の風神雷神、大蔵のベースソロは前半と後半で表情が変わりつつも一貫してスコッチウイスキーのような喉奥から燃え上がる芳醇な熱を燻らせていた。
それに続くのは、今までのライブで最も楽しそうな田中。いたずら好きの少年のような笑顔でパッションを爆発させながらアドリブソロを締めくくる。
つられて笑顔になりながら歌い上げていく杉田の、スモーキーでどこかジュブナイルな声を聞いていると、やはりこの曲が彼らのシグネチャーであることは必然のことに思えてくる。

パフォーマーズハイ

フジロックを目前に控えた1、2週間「眼前に迫っていることは客観的事実として理解しつつもその実態をどうしても掴めず、フワフワとした時を過ごしていた」と仲間に語っていた杉田。しかしその言葉とは裏腹に、この日のパフォーマンス中のことについて「ハイになりすぎていて本当に記憶が無い」とも語っていた。保田は終わった後のことをずっと考え、大蔵は終わった後もうまくできたのか逡巡していたとのこと。緊張感と高揚感は実は脳波が似ていると言われるが、そんな何者とも見分けのつかない感情に襲われながらも、最後は自らの身体感覚のようなものでそれらを乗りこなしていったのかもしれない。
昨年のROOKIE A GO-GOのステージを終えた後、真夜中の車の中で全員が「どうやったら来年のRED MARQUEEに出られるか」を考え議論していたという。本気で思い描き、真剣に掴み取りに行った未来は、彼らを歓迎してくれたようだ。

遥か彼方に見えた憧れのステージ

次の“さんざめく” (from 1st album『NEO TOKYO METRO』)のサビは杉田の伸びやかなボーカルが印象的な一曲。手足を大きく伸ばして空を仰ぎ見るような姿は、かつて遥か彼方に見えた憧れのステージを手にし、それを全身で感じているようにも見えた。
そして短いMCから続いた“36℃” (from 1st EP 『新東京 #1』) 。
1サビの後の間奏、MVで言うところの「36℃」とタイトルが出るセクション。ここでもいつもとは異なる短くも激しいベースソロが差し込まれる。キーボードもドラムも原曲とは違うアレンジが細かく入る。

そしてすぐさま“Morning” (from 2nd EP『新東京 #2』) 。
原曲よりわずかに早いテンポはスーパプレイへの期待感を高めていく。杉田のラップライクなBメロ、そして鋭い緊張感のあるサビを経たソロセクションでは、田中が立ち上がって会場を見渡しながら奏でていく。そして大蔵のこの日最も激しいソロパートでは、火を吹くスラップと両手で弦を叩く姿に指笛で応える観客も。
ラスサビ前の小休止箇所で杉田が新曲リリースをさらりと告知したのち、保田のスネア16分音符8発とともに背後の巨大スクリーンに閃光のような「SHINTOKYO」が、そして4本の曲線を纏った「新東京」のロゴが映し出される。「踊れーーー!!!後ろまで!!」とシャウトする杉田はこの日一番の笑顔を見せながらラスサビへ。屋根の外まで続く観客を見ながら、このステージが自分達のものであることを反芻しているようだった。最後の一音に保田も田中も思わず立ち上がり、大蔵はお立ち台を駆け降りた。全員の顔に走り切ったあとの笑顔が滲み出ていた。
「フジロック、楽しもうね」と締めくくった杉田の言葉通り、メンバー自身がこの舞台を楽しんでいたのかもしれない。

全員が味方

開演直前、ステージ裏で円陣を組みながらリーダーの田中はこう語っていた。
「スタッフはもちろん、
ここにいる全員新東京を選んで見に来てくれている、全員が味方。
そして本番一番近くにいるメンバーがそれぞれの最大の味方。
一番練習してきたのを知ってる。
本番はみんなで目を合わせて楽しくやろう。」

ーーそうして彼らの夏が、フジロックの歴史に刻まれた。

PLACE : 苗場スキー場
STAGE : RED MARQUEE
DATE : 2024.07.26(Fri)